ヤスジのかるい思い出話(ヤスカル話) | HOME |
第四話 ザ・引越し | ヤスカル話目次 第二回へジャンプ (2003.9.14 UP) 第三回へジャンプ (2003.9.16 UP) 第四回へジャンプ (2003.9.19 UP) |
第一回 (2003.9.11 UP) 引越しは急に決まった。 ぼくのお店(古本屋)が入っているこのマンションで賃貸物件が出ればいいなとは前々から思っていたのだけれど、ここは基本的に分譲マンションだから出ても売り物件ばかり。さすがに来年で築30年を迎えるこの物件を買う気にはなれないから、一応管理人さんには「もし賃貸で出たら声をかけてください」と1年くらい前に言っておいたものの、管理人さんもこっちも、そんなことはすっかり忘れていた。 それが先日、部屋探しとはまったく関係のない検索をインターネットでしていたら、偶然にもこのマンションから賃貸物件が出ているのを見つけて、さっそく問合わせてみるとまだ空いているという。それじゃあということでパタパタとここを借りることに決まった。 まるで降って湧いたかのような引越し。引越そうなんて心の準備も何も出来ていなかったから急にせわしなくなった。引越しの荷造りは?日取りは?車の手配は? 上京してからこれまで6回の引越しをしたが、学生の頃やフリーター(当時こんな言葉はなかったけれど)だった頃は、レンタカーを借りて友達に応援を頼んでせっせと引越しはできていた。それがぼくも友達もいい歳(何がいいのかは謎)になって、それぞれみんなちゃんと仕事もしているのに、おいそれと引越しを手伝ってくれとは言えない。ましてやこちらはできれば自分の店の定休日である月曜日に引越しをしたいから、平日が休みの友達なんて思い当たらない。 前回の6回目の引越しは妻と二人だけで軽トラを使って、片道5キロの引越しを4往復もしてやったのだが、妻はそれですっかり懲りてしまっていて、また二人だけで荷物を運ぶということは考えられないようだ。そんなわけで、おのずと引越し業者へ頼もうということになった。 引越し業者をインターネットで調べた結果、有名な二社がその有力候補として絞られた。キリギリスさんマークの引越社とカモネギ引越センターだ。その二社が候補として絞られた理由は、まずエリアがこの辺りをカバーしていたこと、その会社のホームページ(以下HP)にはその仕事振りがこと細かに紹介されていて、安心して任せられそうだったこと、そしてかなり安そうだったことだ。 引越しは各家庭によって荷物の量も違うから一概に同一料金では出来ない。どこの業者でもまず見積もりを取ってもらうことになるが、キリギリス社のHPには一応の目安として「○人家族で○LDKの場合○○円より」のように書かれていて、うちの場合は「27,800円より」のパターンが当てはまりそうだった。 27,800円は最低料金だろうけど、加算されても4万くらいで収まるんじゃないかな?そう思ってさっそくキリギリスのHPから見積り依頼を申し込むと30分もしないうちに返信がきた。"こちらから電話をかけていい時間と、見積もりに伺っていい日時をご連絡ください"とのこと。いきなり電話をかけてこないで、まずはメールでお伺いを立てるなんてなかなか気を配ってるなと感心しながらそのメールへの返事を書いているところへ電話のベルが鳴る。 「こちらはキリギリスさんマークの引越社と申します。このたびはお見積もりのご依頼を頂きましてありがとうございます。ぜひ当社にお見積もりさせていただきたいと思いご連絡させていただいたのですが・・・」 「今メールを受け取ってそれの返事を書いてたとこなんですけどね・・・」 (なんだなんだ、あのメールの意味がないじゃないか、別にいいけど) 電話でこちらの住所と引越し先の住所を告げて、引越すのは二人で、2DKの部屋の荷物のほか、自宅から300mほど離れたところに六畳ほどの広さの倉庫があって、そこの荷物も一緒に運んで欲しい旨を伝え、次ぎの日に見積もりしにきてもらうこととなった。電話の応対も丁寧で気持ちがよく、なんとなくもうお任せしようという気分になっている自分がそこにいた。 さて次の日。 約束通りの午後3時にキリギリス引越社の人がやってきた。真面目そうで身なりもきちっとしてさわやかな感じの人だ。 まずは部屋の中をチェックシートに記入しながらチェック。そのあと倉庫へと案内する。倉庫の中には積上げられた本の山。しかしキリギリスさんは驚いた様子もなく「この棚6台も運ぶんですよね、わかりました」と、ものの1分でそこの見積もりは終わってしまった。 これで見積もり終了かな?やや不安を感じながら「これでもう、すぐに見積もり金額は出るわけですか?」倉庫から自宅への帰り道、歩きながら尋ねると「ええ、すぐに出ます」とだけ答え具体的にいくらぐらいですねなどということは言ってくれない。こちらもあまりせっつくのもなんとなくカッコ悪い気がして、会話も弾まないままの二人は自宅まで戻ってきた。 「それではこれから見積書の方を書かせて頂きます」 「あ、ではこちらに座ってください」 そう言いながら座布団をすすめると、妻はおしゃれなグラスによく冷えたウーロン茶をついで運んできた。 「冷たいものでもどうぞ」 「あ、すいません」 カランカラン。 かろやかに響く氷の音。 (ククク、なんでたかがウーロン茶でこんなにおしゃれグラスやねん) ぼくは必死で笑いをこらえながら、キリギリスさんが遠慮しないようにと思って先におしゃれグラスを口にしたが、キリギリスさんは喉が渇いていなかったのか、グラスへ手をのばす気配さえなかった。 細かい部分を書き終えたキリギリスさんは「それでは」といった感じでぼくたちに見積書を見せながら具体的な金額を記入し始めた。 「運賃55,500円、これはトラックのレンタル料です。作業料80,000円、これは最初から最後までの作業にかかる料金です。この8万からインターネットからのお申し込みでしたので20%引きで△16,000円、それと平日割引が20%で△16,000円、それから午後からのお引越しですので午後割引がこれは10%で△8,000円」 (おお、どんどん引かれていくぞ。だけど作業料8万ってなんやねん、しかもトラック代だけでとっくに予算オーバーやで) 「そうしますと、今のところ95,500円となっています」 キュ、キュ、キューマン!! そんなだせるかい! ぼくの眉は一気に曇ったに違いない。 キリギリスさんはその曇りを見逃さなかった。 「ま、これは最終的な金額じゃなくて、これ以上引けないかといえばそんなことはなくてですね、運賃の部分は向うから言われている金額なのでこれ以上引きようがないんですが、この作業料の部分でがんばらせてもらうことはできます」 (これ以上引けないことはないって、なんだそりゃ、だったらはじめからこれ以上引けない数字出せよ、運賃は向うから言われてるってどういうことだ?つまりトラックはトラック業者からレンタルしてるってことだろうな。それにしてもトラック代だけで55500じゃ、どんなに作業料をまけさせたって6万以下ってことはないだろう。だめだこりゃ、話にならん。) ぼくが「うーん」と唸りながら言葉を失っていると、 「そちらでもいくらぐらいという予算はあったかと思うんですけど・・・」 「ええ、、、かなり開きがありますね」 「いくらぐらいですか?」 気のせいか、うすら笑いを浮かべているように見えた。 「御社のホームページを見たんですけど・・・」 「うん」 「あそこに確か27,800円よりと書いてありましたよね」 「うん」 (あれ?この人なんで急になれなれしい返事になってんだ?まあいいか) 「27800っていうのは最低ラインだろうから当然加算されるとしても、それでも4万くらいで収まるのかなと思ってたんですよね」 「いやー、4万という数字は出ないねー」 「まあ、あと倉庫の分もあるから・・」 「うん」 「・・その分を加算しても5万までかなって思ってたんですよね」 「そーですねー。5万は出ないっすねー。どんなにがんばってもこの運賃(55,500)以下ということはありえないわけですから」 「27,800円というのはどういう場合の金額なんですか?」 「それは・・・、トラックも空いているものを使って、日取りもこちらの都合にあわせてもらって・・・ごにょごにょごにょ・・・」 なんだか歯切れの悪い答えが返ってきた。 つまりあれは撒き餌ということか。ある程度それはわかっていたけれど、あまりにも誇大広告過ぎやしないか?ジャロってなんじゃろう。ちなみに後日もう一度キリギリス引越社のHPを見てみると「27,800円より」のページがすっかりなくなっていました。ぼくのツッコミのせいではないとは思うけど、やっぱりあちこちからクレームがついてたのかも。 とにかく、最高5万までしか出す気がないということがわかったのか、「それじゃ精一杯ぎりぎりの数字を出させてもらいますので・・・」と言いながら最終的に書き入れた数字は70,000円+消費税3,500円の73,500円 「もしこれでよろしいようでしたら、電話お待ちしてます」 「わかりました。ではこれで検討してみます」 ぼくは "こりゃないな" と思いながらもとりあえずその見積書を受け取ってキリギリスさんにはお引取り願った。 結局キリギリスさんはおしゃれウーロン茶を一口も飲まずに帰っていって、 「手つけてないから私飲んじゃお」 と妻がそのおしゃれウーロン茶を飲んでいた。 「出されたお茶に口もつけないようなやつはアカンで」 それが本当にアカンのかどうかはわからないけれど、なんとなくそんな気がしてキリギリスさんを批判したのは、予算と見積もりの大きな開きにイラついていたからかもしれない。 「こりゃだめだな」 妻もきっと "こりゃないな" と思っていると思ってぼくが言うと 「えー、でも倉庫もあるし、こんなもんなんじゃないの」 とキリギリスを使ってもよさそうな反応だ。なによりも "やっぱり二人だけで運ぼう" とぼくが言い出すのを恐れている感じ。 「とにかくもうひとつの引越し屋にも見積もり頼もう」 そう言いながらすぐにカモネギ引越社のHPを開くと、そこにも引越しプランの目安金額が出ていた。 「ファミリーコース(中家族向き:3〜4人くらい)38,500円より 〜3t車使用」 うちは二人だけど倉庫の分も入れると3t車は必要だろうから、このコースに当てはまるはずだ。これに加算されても7万ということはないだろうし、うまくいけば5万で収まるかもしれない。そう思いながら見積り依頼の番号へ電話をかけた。 「今日これから来てもらう事は可能ですか?」 「今日はもうみんな出てしまっていますので、明日でしたら大丈夫ですけど」 「それじゃあ、明日の午前中10時頃にお願いできますか」 「かしこまりました。後ほど夜7時から9時の間に担当のものから電話を入れさせますので、詳しい訪問時間などは担当のものと打合せしてください」 「わかりました。よろしくお願いします」 そのあと約束の7時から9時の間に電話はなかった。 「約束を守らないようなところはアカンで」 ぼくは妻に愚痴をこぼしながら眠りに就き、結局電話がかかってきたのは翌朝の9時であった。 夜7時から9時の間というのがまさか夜7時から翌朝9時までの間という意味ではなかっただろうけれど、このいい加減さに一抹の不安を覚えずにはいられなかった。 (つづく) さて、カモネギ引越しセンターの見積もりはどうだったのでしょう!? 第二回をどうぞお楽しみに。近日公開!! 第二回 (2003.9.14 UP) 明日の朝一で電話がかかって来るかもしれないぞと思って、いつもは就寝前にOFFにしている電話器のベルはONのままにしておくと、案の定、朝の9時ちょうどに電話がなった。 「あした朝っぱらから電話がなってもぼくは出ないからねっ」 夕べ寝る前にカモネギへの不満を妻にぶつけてあったせいもあって、電話には妻が出た。聞くと、10時には間に合わないという。午後にしてくれないかというので、12時からは店を開けなきゃだめなんだと言うと、なんとか11時までには、できるだけ早く伺えるようにがんばりますと言ったという。 なんだかなー、大丈夫かよ。 不安と不満を募らせてると、10時にまた電話がなった。どうやら11時には来られないらしい。妻は受話器の口を抑えながらぼくに聞く。 「やっぱり11時にも無理なんだって。午後1時だったら確実に行けるって言ってるけど、どうしよう」 「じゃあもう1時でいいよ。マリモ(妻仮名)ひとりで立ち会ってよ」 結局カモネギは1時に来ることになって、妻がひとりで対応することとなった。ま、別に二人で立ち会う必要もないだろう。ぼくは楽観して仕事をしながら妻の報告を待っていた。 午後2時をだいぶん回った頃、妻が店に出てきた。 「カモネギさんはさっきお帰りになりました。6万!6万!やったね。私がんばったでしょ。かなりまけてもらったよ。税込6万!えらい?えらい?」 確かに昨日のキリギリスさんマークの引越社の見積もりが73,500円だったのと比べるとかなり下がっている。しかし最高5万までだなという頭があったぼくにはもうひとつしっくりこなかった。 妻は6万に至った経緯を話し始める。・・・・・・ 〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 12時40分頃ベランダに出てみると、マンションの前には一台の乗用車が停まっていて、カモネギさんらしき人が乗っていました。 (1時の約束だから時間まで待機してるのかしら?) そう思っていると、やはり1時5分前にドアベルがなってカモネギさんがやってました。 「遅くなってすみませんでした。その分しっかり勉強させてもらいますんで」 「ま、どうぞ」 カモネギさんを部屋の中へ招き入れると、さっそくチェックシートを取り出してチェックを始めています。そのうち壁に貼ってあった写真を見つけたカモネギさんは 「こちらが旦那さんですか?」 「あ、そうです」 「いやー、かっこいいですねえ」 「いえいえいえ」 「奥さんも美人だし、美男美女のカップルですね」 「ははは、いえいえ、そんな」 (おいおい、そんなお世辞にのるような私じゃないわよ。余計なこと言ってないでしっかり頼みますよホントに!) 一通り部屋の中を見終わったところで倉庫へと案内しました。 ガラガラガラガラとシャッターを開けて中を見せると 「これはすごいですね、Mダン(Mサイズのダンボール)50枚は要るかな。Lダンじゃ重たすぎますからねえ。・・・はい、わかりました」 倉庫も見終わり、自宅へと歩いて戻る途中、間を持たせようと思ったのかカモネギさんは色々と話しかけてきます。 「旦那さん、音楽やってるんですか?」 「ええ、まあ。今は趣味程度でやっるみたいですけど」 「へえー、ミュージシャン宅の引越しやるの2回目だなー。奥さんは渡辺満里奈に似てるって言われません?」 「いえいえいえ、そんなあ」(もー、お世辞はもういいからっ!) そんなこんなでいよいよ見積書製作となりました。 「冷たいものでもどうぞ」 カランカラン。氷がグラスを鳴らします。 (またヤスジに笑われちゃかなわないから今日は普通のグラスよ) 「あ、こりゃどうもすみません」 ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ (昨日のキリギリスさんと違ってちゃんと飲んでくれたわ。やっぱりこの方が感じいいわよね) 「ところで、梱包資材ですけど、あの倉庫もあるから、ダンボールはMダンが60!Lダンが40!食器包みが100枚!エアキャップ(プチプチ)1本!ガムテが7個!布団袋2枚!それとハンガーBOXが2個!こんだけサービスで送らせてもらいます! ただこれ送るのに送料が5,000円かかっちゃうのよね。着払いで送りますから、その時5,000円だけ払ってほしいの。本当は5,000円じゃきかないんだけど、それ以上はこっちで持ちましょうってわけ」 (ゴ、ゴ、ゴセンエン?!高くない?それとどうでもいいけど、なんでこの人、急にオネエ言葉なの??) 「でもいいや、奥さんきれいだからその分もこっちから引いときます」 そう言うとカモネギさんは見積もり金額を記入する欄のひとつに△5000と記入してくれました。 (ま、その分引いてくれるんだから送料5,000円でもいいか) さて、見積もり金額記入欄の上から順に金額が入っていきます。 「使用車は3トンロングで全部積み込みます。万が一積みきれない時はピストンしますから。これで完了までの運賃が51,600円 そして作業員は運転手含めて3人つけます。これが3人で36,000円 で、この合計からさっきの送料5,000円を引きまして82,600円、に消費税5%で、締めて86,730円!」 (ハチ、ハチ、ハチ、ハチマン〜〜〜〜!キリギリスより高いやんけ!) カモネギさんもまさかこれで決定とは言わないだろうと思っていると、やはり値引きの話を切り出してきました。 「ほかでも見積もりは取ってます?」 「ええ、キリギリスさんのところで73,500円でした」 「奥さんの方での予算というか希望金額みたいのってあります?」 「はい、・・・6万ですね」 「そっか、6万か・・・じゃあもう、奥さんきれいだから、交渉してみよっか。ちょっと上の方と交渉してみますよ」 そう言うとカモネギさんは自分の携帯電話を取り出して会社へ電話をかけている様子。 「お疲れ様です、兼城(仮名)です。いま浅倉さん(仮名)のお宅に見積もりできてるんですけど、3トンロングの3名、資材込みで、6万でいけますかねえ」 「ろくまん〜〜〜!? 6万じゃ、うちの利益がでないじゃないか!」 電話の向うから上司らしき人の怒鳴り声が聞こえました。 「いや、ほかで6万で出てるんすよ」 カモネギさんはこちらに向かってウインクのサインを送っています。 (まあ、そんな嘘までついてくれちゃって大丈夫かしら。そうだわ!) この際と思った私は小声で「税込6万でお願いします」と言うとカモネギさんはコックリコックリとうなずいています。 「ほかで6万って、どこだ?」 「葛西さんですよ。葛西さんのところで6万プラス消費税で出てますんで、うちは税込6万でやりましょうよ」 「ちゃんと見積書見せてもらったのか?」 「ええ、見せてもらってますよ、ここにあります」 「6万じゃ資材費も出ないよ。ちょっと社長に聞いてみるから待ってな」 カモネギさんはいけるいけるといった風にまたウインクをしています。 「あ、そうすか!OKね。じゃ、これでいきますんで」 どうやら6万で話しがついたようです。するとすぐにまたほかのところへ電話をかけて 「あ、どーもぉ、兼城です。6万で決まったから、資材の準備しといてくれる?え?大丈夫大丈夫、ちゃんと社長のOK貰ってるから。じゃ、よろしくー」 「それじゃあ税込6万ってことでOKですから」 そう言いながら見積書の欄のひとつに "△値引き" と書いてから、一番下の総合計の欄に「60,000税込」と書き込んで見積書は完成したようです。 「梱包資材の方はどうしましょうかね」 「そうですね、早く荷造りもしなくちゃいけないし、金曜日くらいまでにもらえます?」 「わかりました。どうしましょ、自宅の分と倉庫の分のダンボールは別々に送った方がいいすかね」 「そうですね、じゃあそうしてくれます?」 「わかりました。じゃ、Mダン60枚は倉庫の方へ送っときます。それじゃ、ここんとこにハンコもらえますか」 そう言うとカモネギさんはさっき完成したばかりの見積書を差し出してきました。 「え?ハンコいるんですか?これ見積もりですよね。まだ完全にお願いすると決めたわけじゃないし、ハンコはちょっと・・・」 「いや、大丈夫です。これは見積書のハンコですから。見積もりに来ましたって証拠に貰うもんですから」 「ええ・・でも・・ちょっとハンコは・・・」 (安易にハンコなんて押せないわ) こちらが渋っているとカモネギさんは何やら書類を取り出してそれを見せながら 「ここにも書いてありますように、引越し当日の2日前までならキャンセルできますから。キャンセル料も一切かかりませんから心配いりませんよ」 (そうか、この人、また改めて契約書にハンコ貰いにくるのが面倒なんだわ。キャンセルもできるって言うし、ま、いいか。税込6万なら文句ないしね) 「じゃ、9/22予定入れときますんで、もしキャンセルの場合のみ、2日前までに電話下さい」 「はいどうもぉ、お世話様でした」・・・〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・ 「・・・というわけ。えらいでしょ、わたしがんばったでしょ」 ちょっと得意げに交渉成立の報告を受けたものの、やっぱりイマイチぼくは納得できなかった。 「うーむ、・・・・・・なにこれ!送料5,000円って、ダンボール送んのに5,000円もかかんねーべ」 「ね、わたしも高すぎるって思ったけど、この分はちゃんとこっちから引いてくれてるよ」 「ああそうか、ん? まてよ、こっちから引いてるって言ってもダンボールが届いた時に5,000円払うわけでしょ。税込6万って言っても、つまり65,000円ってことじゃん」 「あ」 「まんまと騙されてんだよ。それに作業員3名36,000円って、3人も必要ないんじゃないの?こりゃ向うの思惑どおりだよ。電話で上司と交渉してたもの向うの作戦どおりに違いないんじゃないの。聞こえるように向うもわざと大きい声だしてたんだよ。65,000円じゃキリギリスとあんまり変わんないもんな。やっぱり23日にして岸本(友人仮名)にきてもらって、自分たちでやった方がいいんじゃないの」 とりあえず友人の岸本君からは、会社が休みの23日なら手伝いにこれると聞いていたので、23日の秋分の日に作業を行うという選択肢も残されていた。 「えーっ、もうカモネギでいいんじゃないの。いくら岸本君に来てもらうと言っても、倉庫もあるんだし、体ガクガクになったら次の日仕事になんなくなっちゃうよ。ダンボールだって集めなきゃだめだし」 妻は少々お金がかかってもなんとか楽に引越しを済ませたいという気持ちの方が強いようで、もう頭の中ではグルグルとカモの行進が始まっているようだった。ぼくとすればこのぐらいの肉体労働じゃ体はガクガクにならない自信はあるから、できるだけ安く済ませたいところだ。しかしよく考えてみれば、秋分の日に店を閉めるということは、当然その日の売上がゼロということになるから、それを考えると結局引越し屋に頼むよりも高くついてしまうんじゃないかと思い直し、 「わかったわかった。じゃあカモネギでいいよ。送料5,000円と作業員3名の件はあとで電話してみる」 (つづく) というわけで、カモネギ引越しセンターを利用するということに決定したのでありました。さてこのあと、ヤスジとカモネギとの交渉はどういう展開になったのでしょうか。 次回をお楽しみに!coming soon ! 第三回 (2003.9.16 UP) 次の日になってから、カモネギさんの名刺に書かれていた携帯の番号へ電話をかけた。担当の兼城さん直通だ。ダンボールは、やはり自宅と倉庫とに分けず自宅へまとめて送ってもらうことにしようということにしたので、まずはそのことから切り出した。 「きのう見積もりに来てもらった浅倉ですけど、ダンボールはやはり自宅の方へまとめて全部送ってもらえますか」 「そうですか、倉庫の分も自宅へということですね。わかりました、そういうふうに手配しておきます」 「えっと、このダンボールですけど、これ送料5000円もするんですか?」 「うん、5000円かかっちゃう」 「えー?そんなにします?」 「うん、ほんとは5000円じゃきかないと思いますよ。うーんと、いくらぐらいだっけな?7、8・・・、ま、その出た分はこっちで持ちましょってわけ。お客さんには5000円だけお願いしますってことね」 「そうなの?これダンボール100枚っていうと2ヶ口か3ヶ口くらいでしょ、5000円はしないんじゃない?」 うちでも仕事柄、宅配便はよく利用するからそんなにしないだろうことはわかっている。うちの場合は都内なら大きさに関係なく1ヶ口500円だ。ましてカモネギのような大手なら運送会社とももっと安く契約しているはずだし、それ以前に自分のとこが運送屋なのに、なんでわざわざ飛脚急便を使うのかも理解できないところではあった。 「ふふふ、これがけっこうするんですよ。Lダン一束いくら、Mダンいくらって決まってるんですよね。うーんと、いくらだったっけな・・・」 「つまりこれ、送料にダンボール代もいくらか含まれてるってこと?」 「いや、これは送料だけ。本当は5000円じゃ収まんないんだけど出た分はこっちで持ちましょってわけ」 (さっきから同じことの繰り返しだなあ) 「エアキャップだけでも送料結構かかるんですよ。えっと、いくらだったっけな、たしか送料だけで2000円くらいだったと思う」 「ニ、ニセンエーーン!?うちでも商売柄エアキャップは買ってるけど、1本 1400円くらいで買えるよ。送料も700円だったかな」 「いや、板橋から出しますんでね」 「イタバシ?同じ都内じゃない」 「ははははは・・・」 もう笑ってごまかすしかないようだった。 「じゃあエアキャップ要らない。あとこの食器包みっていうのもいいや。そしたらその分送料も安くなるんでしょ」 「いや、それ抜いても送料5000円は変わんない。本当はそれ以上かかっちゃってんだもん。・・・それじゃあ梱包資材は送るのやめときます?それなら5000円はかかんない」 「うーん、でもダンボールは欲しいんですよね・・・」 (こりゃちょっとイタイとこ突かれたな。もしダンボールをほかで買うとなると5000円じゃ買えないしな) 「じゃあ、エアキャップと食器包み抜いた分をトータルの6万から引きますよ。いくら引けるかちょっとわかんないけど、それは会社に確認してみる。でもエアキャップないと、ほら、家にパソコンあったじゃないすか。ああいうものもむき出しになっちゃいますよ」 「あ、それは大丈夫。うちにも商売柄エアキャップはあるから。じゃ、そういうことでお願いします。・・・ということは、資材はサービスって言ってたけど、トータル6万の中に含まれてるってこと?」 「へへへ、ま、どこでもそうですけどね。サービスとは言ってるけどその分貰わないと、こっちも資材は買っちゃってるから」 「まあ、そうでしょうね。そちらもこのトータルの部分で利益とか出していかなくちゃだめなわけですしね」 (とりあえず理解のあるところも示しておくか) 「へへへ、そうなんすよ。じゃ、会社に確認して折り返し電話入れます」 「あ、すいませんすいません、もう一点。ここに作業員3名36,000円ってあるんですけど、これ、わたしも一緒に運びますんで2名にしてもらって、その分1万くらい引いてもらうことはできないすかね」 「うーん、もし2名にしたとしても1万は引けないと思いますよ」 「でも3人で36,000円ってことは、ひとり頭12,000円ってことですよね」 「ひとりいくらっていうか、トータルで出ちゃってるから・・・これも会社に確認してみます。じゃ、一旦切ります」 間もなく折り返しの電話。 「まず資材の件ですけど、エアキャップと食器包みは要らないということで、この分で3000円引けます。それと作業員の件ですけど、これはご主人がちゃんと真面目に手伝ってくれるっていうのが条件としてまずあるんだけど・・・」 「そりゃやりますよ。それは大丈夫です」 「そういう条件なら、5000円までだったら引ける。これはご主人がちゃんとやってくれるってのがあっての話ですよ」 (なんだよなんだよ、おれの労力は5000円かよ、別にいいけど。なんにもしないで指図だけしてたってしょうがないもんな) 「やりますやります。ちゃんとやりますよ。それじゃあそれでトータル52,000円ってことですね。それで資材の送料はエアキャップがなくなったから3000円でいいんですよね」 「いや、送料は着払いの送料だから5000円は変わらない」 (ん???なんだか分かんないけどどうせダンボールは必要だしまあいいか) 「え、そうなの?まあいいか。じゃ、わかりました。それじゃあ税込52,000円ってことで」 「はい、それじゃよろしくどうぞ。現場はハンパじゃないから、当日は半そでの方がいいかもしんない」 (当日は遠慮なくこき使うぞといってんのかな?半そででも長袖でもそんなもんこっちの勝手やん。ま、望むところ。こうなりゃこっちが現場監督みたいなもんだからきっちり働いてもらいまっせ) 「はははは、タオル首に巻いて待ってますよ」 こうしてようやく契約成立。送料の5000円を入れてもトータル57,000円ならまあいいだろう。これが妥当なところかもしれないなと思いカモネギ引越しセンターに頼むことに決定した。 〜〜〜〜〜〜 その二日後、さっそくダンボールが送られてきた。朝一番の9時。夜の遅い我が家にとってはけっこうつらい時間だ。飛脚急便のピンポンで起こされたのだが、ぼくは寝たふりをして妻が対応に出た。 「代引きで来てますけど、いいすか。あとサインかハンコお願いします」 「どうも、ごくろうさま」 飛脚さんが帰ると、寝たふりをしていたぼくもすっかり目が覚めてしまったので布団から抜け出して様子を見に行く。 「着払いって言ってたのに、代引きで来てるよ」 「やっぱね。変だと思ったよ。送料だけで5000円もするわけないもん」 「でもこれ2500円で来てる」 「え?あら、やっぱエアキャップなくした分安くしたのかな?」 「でもエアキャップも来てるんですけど・・・」 「え?」 届いたばかりの荷物に目を向けると妻の言う通りエアキャップが一緒にくくりつけられていた。 「それとどう見ても、これでダンボール100枚あるように見えないんですけど・・・」 「あ、ほんとだ。にゃーしゃーろーやー・・・あれ?40枚しかないぞ。あ、この間に挟まってんのは食器包みじゃないの?なにやってんだよカモネギ!やっぱ半分しか来てない。ということは半分は倉庫の方に行ってんじゃないの。そうだよ、だから半分の2500円なんだ。なにやってんだよまったく。ぜんぜん話し通じてないじゃん。合計52,000円もまさか訂正されてないんじゃないでしょうねっ、ったく、カモネギっ!」 すぐにカモネギ兼城さんの携帯へ電話を入れた。 「梱包資材は自宅と倉庫とに分けず、すべて自宅の方へ送ってもらうように言いましたよね。それが分かれて来てるですけど」 「あれっ?ちゃんと一ヶ所に送るように言っといたんだけどな。ちゃんと伝わってなかったのかな」 「もうそれはしょうがないからいいんだけど、まだ倉庫の分は届いていないけど、そっちもちゃんと送ってもらってるんですよね」 「え?まだ届いてない?伝票はどうなってます?あ、そう2500円。じゃあやっぱり二つに分けてんだわ。もしかしたら倉庫の方は不在通知が入っちゃってるかもしれない」 「じゃあちゃんと送ることは送ってんですね。それならいいけど。それと、要らないと言っておいたエアキャップも来てるんだけど」 「・・・そうですよね、エアキャップは要らないからと言う話でしたよね。来てます?」 「あと送料着払いと言うことだったけど、代金引換で来てるんですけど。代金引換ってことはダンボール代もこっちで払ってるってことですよね」 「え?代金引換?送料5000円の着払いで行ってると思うんだけど」 「いや、5000円は5000円だけど代引きの伝票で来てるってことはこれは送料だけじゃなくてダンボール代も含まれてるってことでしょ」 「あれ?・・・会社に確認してみます」 「ところでこないだ決めた見積もりの金額は大丈夫?ちゃんと52,000円に修正されてるのか不安になって電話したわけなんですけど」 「それは大丈夫だと思いますよ。振込用紙が届くと思いますんで、それで振り込んでもらって・・・」 「振込用紙?先払いってことですか?」 「うん、コンビニとかで・・・」 「まあ、コンビニでもどこでもいいんだけど、先に払うわけ?作業が終わってからでもいいんでしょ」 「いや、先に払って貰うことになってんですよね。・・・その辺も会社に確認してみます」 とりあえず電話を切って連絡待ち。 10分ほどで電話がかかってきた。 「まず梱包資材ですけど、もう出ちゃてるんで止めようがないんですよね。エアキャップもそのまま使っちゃってもらっていいです。送り返してもらったりしたらまた送料かかっちゃうし」 「そうですか。じゃあこれは貰ってもいいんですね」 「それで見積もりの件ですけど、もし6万円の請求書が送られてきてもそれは破棄しちゃって下さい。それは払わなくていいです。5万2千円の請求書がくるまで払わないで待ってて下さい」 「わかりました。ま、いずれにしても作業が終わるまでは払わないからそれは大丈夫ですよ」 「それは問題あると思いますよ」 「え?というと?」 「先に払ってくれないと作業員が金を払ってもらえないんじゃないかと思ってちゃんと働かないかもしれないです」 (もしかしてこれは脅しじゃないのか?先に金出さなきゃ働かないよって言ってるようなもんじゃん) 「客からすれば先に金だけ払ったはいいけど、ちゃんと作業してくれるかどうかわからないって不安があるよね」 「・・・それじゃあ当日直接作業員へ払ってもらうっていうのならいいと思うんですけど」 「そうしますよ。当日払います」 「はい、じゃ、よろしくぅ」 それで電話を終わらせようとしたので、すかさず 「代引きで送られてきたという点は?」 「それは何かの手違いだと思いますよー。伝票は代引きの伝票だったかもしれないけど5000円は送料と思って下さい」 「手違い?いずれにしても代引きってことはその中にダンボール代も含まれてるってことだよね。送料だけじゃないでしょ。それじゃあこの分のダンボール代と見積もりの料金に含まれている分とで二重払いになってるんじゃないですか?」 「いや、そうじゃないです。もし送料にダンボール代も含まれてたら5000円じゃ足りないですよ。うちでも希望者にはダンボールを売ってはいるんですけど、えーっといくらだっけな?Lダンで1枚200・・・」 「ま、具体的な数字はいいですから、どっちにしても代引きということはダンボール代もいくらか上乗せされてるってことでしょ」 「いや、伝票の項目が違うと思うんだよね」 「項目ぅ?」 「伝票は代引きの伝票かもしれないけど、項目のところで・・・」 (もーええわ。めんどくさい。どっちにしろダンボールは必要だから折れてやるか) 「ま、わかりました。これはこれでいいですから、当日お願いしますね」 「はい、よろしくどうぞー」 相手は一応愛想よく電話は切ったけど、腹ん中はムカムカしてるに違いない。 うるせえ客だなって。あくまでも送料だと言い張るカモネギ。確かにダンボールは安いものじゃないから5000円なら5000円でいいんだけど、"送料と資材費とで5000円だけいただきます"のように言ってくれればこっちもすっきりするのに。 (つづく) しかししかし、このあくまでも送料だと言い張るところの意味に気が付いたのはしばらくしてからであった。 近日再来! 第四回 (2003.9.19 UP) ところで、はじめに見積もりを取ってもらったキリギリスさんマークの引越社だが、カモネギ引越しセンターに決めた以上、やはりお断りの連絡を入れておいた方がいいだろうと思い、昨日カモネギから6万という数字が出た時点でその旨をメールで送った。 ************ 昨日は見積もりを出して頂きありがとうございました。 他社とも比較させていただき、検討しましが 資材、消費税などすべて込みで6万円で引き受けてくれる ところがありましたもので、申し訳ありませんが今回は 見送らせて下さい。 お手数をおかけしました。ありがとうございました。 ************* もしかすると、それじゃあうちはこれだけでやらせてもらいますなどという返事があるかなと少し期待もしていたのだけれど、それどころか、まったく無視されてしまったかたちだった。ご丁寧にお断りの連絡を入れたのが馬鹿みたいだ。 うちでもネット注文のお客さんから一方的にキャンセルされることもあるから、キャンセルされればおもしろくないのは分かる。しかしそこはその悔しさをぐっとこらえて、笑顔で「またのご利用をお待ちしております」と返事をするのだ。お客さんあっての商売。その姿勢が明日へつながるというもの。しかも、今回の場合は見積もりへ対する返事であって、キャンセルすることに何の遠慮も要らないはず。 「メールの返事もよこさないようなところはアカンで。出されたお茶も飲まないくらいだしな」 無理矢理昨日のお茶のこともこじつけて妻へ愚痴ると 「そうね、たしかに愛想はよかったけど、いかにも営業スマイルって感じだったもんね。その点、カモネギさんは砕けた感じだったけど、逆にその方が親しみ持てたもん」 アバタもエクボ。このときカモネギはまだ善玉だった。そのメッキが剥がれるのに時間はかからなかったわけだ。 さて、この一連のやや疑問の残るカモネギとの交渉に不安を感じた妻は、インターネット検索でカモネギの評判を調べ始めた。すると出るわ出るわクレームの山。それでもカモネギ以上にキリギリスの方がだんぜんクレームは多かったらしい。さらに多かったのは引越しの葛西。これら、人の体験談を読んでいるうちに妻の不安はどんどん募っていったようだ。 カモネギに関して言えば、嘘か本当かはわからないが、社長は元ヤクザ屋さんで、クレーム処理は直属の部下が担当しているだの、クレームの数は都内No.1だの、当日のすっぽかしはしょっちゅうだの、作業員による荷物の盗難に注意せよ、料金を先払いさせるような業者は悪徳だから注意せよなどなど。妻もこんなことならやっぱりキャンセルして自分たちでやった方がいいんじゃないかという気分が高まっていたようなのだが、ここで立ちふさがったのがダンボールだった。 そう、もうすでに5000円を払ってダンボールを受けとってしまっている。そしてこの5000円はあくまでも送料であって、ダンボールを5000円で買い取ったわけではないから、キャンセルすればダンボールはすべて返さなくてはいけない。この5000円は手付金のようになっていたわけだ。気がつくのが遅すぎた。こんな初歩的な部分に気が付かなかった自分が情けない。しかしダンボールがないと引越しの荷造りは進まないし、向うも狙いどころを心得ているということか。 「ま、大丈夫だろう。クレームはクレームのあった人が悔しくて書いているのであって、それがすべてじゃないよ。ぜんぜん問題のなかった人もたくさんいるはず。そういう人がわざわざカモネギさんはすばらしい仕事をしてくれましたなんて書き込みしないもんな」 そう自分に言い聞かせるようにして妻を励まし、さっそく時間を見つけては荷造り作業を始めたのであった。 そしてぼくは、この体験をネタに体験談を書いてやろうと思い、この「ヤスカル話 第四話 ザ・引越し」を自分のホームページに公開し始めたわけだ。 ========= この体験談「ザ・引越し」を公開してから3日目のこと、思わぬ展開があった。 これを読んでくれた音楽仲間のツリトさんから電話をもらったのだ。 「どーもー、ツリト引越しセンターでーす。やー、たいへんでしたね、あれ読んだよ」 「あはは、どーも」 「9/22は予定があるんだけど、次の月曜日の29日なら手伝えるよ」 「え!いいんですか!」 思いがけずのうれしい申し出だった。ツリトさんは、ぼくのお店が月曜日定休日で引越しは月曜日にやりたいんだということを知っていて言ってくれたのだった。 「ありがとうございます。ツリトさんさえよろしければぜひお願いします。だけどひとつ問題は、もうカモネギのダンボールを半分くらい使っちゃったんですよ。カモネギをキャンセルするとこれは買い取りということになると思うんですが、その辺の交渉がどうなるか、カモネギに交渉してみて、あらためて連絡させてもらいます」 ぼくはさっそくカモネギの兼城さんの携帯へ電話をかけた。 「9/22に予約してあった浅倉ですけど、申し訳ないんですけど、キャンセルさせてください」 「どこか他の業者にしたんですか?」 「いや、知り合いに手伝ってもらえることになったんで自分たちでやることにしました」 「そうですか・・・、それで資材の方なんですけど・・」 「これは返したほうがいいんですよね」 「はい、返してもらった方がいいと思うんですよね」 (思うって・・・、なんだか曖昧だな) 「ええ、それがですね、もう半分くらい使っちゃったんですよ」 「あはっ、使っちゃった!」 「まあ、ダンボールはどうせ必要なんで、安く譲ってもらえるならこれ全部買い取ってもいいと思ってるんですけど、なんとか安く考慮してもらえませんかね」 (送料だったとはいえ、実質ダンボール代も含んだ5000円をすでに払ってるんだから安く譲ってくれるだろう) 「そうですね、返してもらうにしても送料がかかちゃいますからね。それじゃあ、ちょっと本社に確認とって連絡入れます」 「よろしくお願いします」 10分ほどで折り返しの電話あり。 「資材は全部買い取ってもいいということで、ま、返してもらっても買い取ってもらってもいいんで・・、これは買い取る場合の金額として聞いて下さい。まず、Lダン、これが1枚250円の40枚で1万円、Mダン、200円の60枚で1万2千円、布団袋、1枚千円の2枚で2千円、ガムテープ、ひとつ300円の7個で2千百円、合計26,100円 ここから先に払ってもらった5千円を引いて21,100円となりますね。これは買い取ってもらう場合の金額だから、買うか返すかはそっちの自由にしてもらってもかまわない」 (おいおい、よく臆面もなくそんな金額を口にできるな。こりゃ話しにならん。即返却決定だ) 「あーそうですか。じゃあやっぱり返します。これ、使った分だけ買い取りであとは返却というかたちでいいですよね。となると、例えばLダンを30枚使ったとして、250かける30で7500円、で、ここから先に払ってる5000円を引いて、2500円を支払うっていうことでいいんですよね」 「いや、5000円は引けない。あれは送料だから」 「え?でもさっき買い取る場合の金額は先に払っている5000円を引いていくらって言いましたよね」 「それは買い取る場合だから、返却する場合は引けない」 「え?そうなんですか?あれ?まいいか、じゃ、わかりました。使った分以外は返却しますんで」 「でもダンボールはどっちみち必要でしょ。ふつうに買ってもそんなに変わんないと思いますよ」 「ま、スーパーかどっかでかき集めますから」 「それならお金かかんないか。返す時の送料もけっこうかかりますよ。きっとビックリするくらいの金額になると思う」 「いや、うちからは大きさに関係なく1ケ口500円で送れますから」 ・・・・・ ということでキャンセル成立。 結局返却するダンボールは3ケ口の荷物となって1500円で送ることができた。使ったのはLダンが22枚とガムテープが2個。馬鹿らしいから向うから催促されるまで知らん顔しとこう。そのぐらいは先に払った5000円で完全に払ってるはずだし。 ちなみにダンボールを普通に買うと、うちが発送用に買っている静岡の業者ならLダンの大きさで1枚 130円くらい。ガムテープはホームセンターで98円で売っているもの。この辺のボッタクリ具合を見ても先行き不安にならざるを得ない。やはりキャンセルしてよかったと、ほっと胸をなでおろしたところだ。 しかしまるっきり安心できたわけではない。9/22当日なってから「キャンセルなんて聞いてないよ」なんて言いながら押しかけてこられはしないかという不安が無きにしも非ずだ。しかしその対策はちゃんととってある。もしキャンセルしていなかったとしても、二日前に向うから確認の電話がなければいけない規定になっているからまず大丈夫だとは思うが。 さてさて、引越しは9/29に決定してレンタカーも予約しました。ツリトさんには本当にお世話になります。この「ヤスカル話 第四話 ザ・引越し」もここでひとまずおしまいです。22日に「聞いてないよー」なんて言いながらカモネギのトラックが押しかけてこないかぎりは。 (了) 2003.9.19 脱稿 このページのTOPへ↑↑ |