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店長裏話

いらっしゃいませも言わない店 (2004.11.29UP)


きのう郵パック(郵便小包)をもって来てくれたおばちゃんったら「こんにちはー、郵便局でーす。それじゃここにサインお願いします」って言いながらぼくがサインしている間--と言っても一瞬のことだよ--に手に持っていたせんべい(おかき?)の小袋をピリッと開けて食べようとしてる。おいおい、いま食うことねーだろ。車に戻ってから食えよな。禁断症状かい!せんべい依存症か!と呆れてしまったよ。ま、別にいちいちとがめたりしなかったけどね。

でもぼくはそういうことに結構反応するよ。たとえアルバイトやパートでもそれによって賃金をもらっている以上はプロとしての自覚を求めるからね。いい加減な仕事をされるとすぐにプチプチきちゃう。態度の悪い店員とか接するとすぐに頭から湯気出ちゃう。
ピーーー ってね。


ぼくの我慢のハードルは普通の人よりちょっと低目かもしれない。そのハードルを越えるともうすぐ口に出しちゃう。「おい、なんだいそりゃ、しっかり仕事せーよ!」てね。いやな客?いやいや、それがまともな反応なんだよ。多くの人はそういうときも我慢してるんだと思う。そんなことでいちいちごたごたしたくないからね。コンビニのバイトとかはそういうもんだと最初から割り切ってる人も多いと思うけど、ほんとはハラワタ煮えくり返ってるんじゃないのかな。割り切ってるから腹も立たないか。


ぼくの店に来てくれたことのある音楽サークルの先輩は「ヤスジはこんなこと言ってるけど、自分の店だっていらっしゃいませも言わないで愛想悪いんだぜ」とサークルの飲み会とかでいつも冷やかすんだけど、それは違う。ヤスジの店は愛想が悪いと言うと、ロッカーだったぼくのことを昔から知ってる人たちは、やっぱそりゃそうだろう、ヤスジがまともに接客できっこないよなって面白がって話は盛り上がる。面白いからわざとそう言うのかもしれないけど、じつはぼくとしてはこの仕事はプライドもってやってるからちょっと傷ついてる。いやそうじゃなくてねと酒の席で弁明してもシラけるだけだからいつもあまり否定はしないんだけど、ここらでぼくの接客術とでも言おうか、経営方針みたいなものをものを述べてみよう。


確かに入店してきたお客さんにはいらっしゃいませとは言わない。言わないけどそれはわざと言ってない。古本屋に足を踏み入れただけで「いらっしゃいませー」と言われたらお客さんも身構えちゃって、ちょっと覗いてみようかなとぶらっと立ち寄りにくい店になっちゃうから。お客さんも放っておいてもらった方がいいはず。電器屋とかでありがちなんだけど、まだ買うか買わないかも分からないのに「何かお探しですか」とか言ってぴったりくっついてこられたら「もうええわ」って気になる人は多いんじゃないかな。

もちろん入ってきた時にすれ違ったり、目が合ったりしたら「いらっしゃいませ」って言うけど、極力目が合わないようにお客さんが入ってくるとわざと何か他のことしているふりをして、お客さんのことはまったく気に止めてないふりをする。本当はめちゃめちゃ気に止めてるんだけどね。そうするとお客さんも気楽に店内を見て回れて、何も欲しいものがなければスーッと出ていける。

入りやすくて出やすい店、これが古本屋の基本だと思う次第です。古本屋に限らず物販の店はそうあるべきなんじゃないかな。店頭でいらっしゃい、いらっしゃい、の呼び込みなんて最悪だ。しかも入口のド真ん中に突っ立ってられたりしたらちょっと素通りしちゃうよね。いらっしゃいませと言うのは「これください」と言ってレジまできたお客さんにはじめて言う挨拶。あと「ちょっとすいませーん」って声かけられた時とかね。

逆に明らかに挙動不審な人だとか怪しげな人には「いらっしゃいませ」とか「何かお探しですか」とかってこちらから声をかける。だからうちの店で「何かお探しですか」なんていきなり言われたらそれは警戒されてるってことだ。

謀大型古書店はいらっしゃいませの連呼作戦のようだけど、あれはうるさいだけだよね。今風に言うとウザイだけ。だって口先だけの「いらっしゃいませ」でしょ、オウムのような。お客さんのほうもホントの「いらっしゃいませ」とは思ってないからああいう店で入るや否や「いらっしゃいませ!」って言われても全然身構えたりしない。でもうちのような小さい個人商店では本気の「いらっしゃいませ」だから、入店するや否や「いらっしゃいませ!」なんて言われたら「絶対なんか買ってってくださいよ!タダじゃ返さんぞ」と言われているようで身構えちゃうってわけだ。内心はそう思ってるんだけどね。絶対買っててよってね。

最近はブックオンでもいらっしゃいませ連呼の逆効果(鬱陶しがられてるって意味で)に気が付いたのか連呼してない店も増えてきた気がするな。100円ショップの"体操"もそうだね。前はバイトの子が「いらっしゃいませ」って連呼してなかったらマネージャーらしき人が怒ってたもんな。声出せ声!って。野球部じゃないんだからさ。

ついでにもう一言付け加えておくと、お客さんが入ってくるや否や「いらっしゃいませ」と言わなくてはだめな業種ももちろんあるよ。飲食店だとか、まあ銀行なんかもそうかな。例えばラーメン屋ならお客さんはラーメンを食べる目的で店に入ってきたわけだから、それは即いらっしゃいませだ。入店イコール会計ということだからね。中には「どれにしようかなー、あれもいいしこれもいいし、やっぱやめたカツ丼にしよう」って出て行っちゃう人もいるかもしれないけど、そんなやつにはナンデヤネン!て言ってやればいいんだよね。

と、長々語ってまいりましたが、ヤスジの店は愛想が悪くないと言ういいわけがましい話になっちゃったかな?でも本当に愛想はいいんだよ。「娘があそこの店は愛想がいいって言ってたからここに売りに来たんですよ」なんてうれしいこと言ってくれちゃってるお客さんもいたんですからねー。こんな自慢してもチト空しいか・・

でもナンデヤネン!の客には厳しいよー。 ナンデヤネンの客にとってみれば愛想の悪い店かな?でもそれはあんたもうこないでくれよってことだからそう思われても当然だろう。金さえ払えばお客様は神様ってわけではないからね。そりゃ少々のことは我慢するけど、やっぱりハードルを越えちゃったらお客さんじゃなくなるからね。人としてそりゃ怒るよ。

余談だけど、以前どこかの掲示板に「どうして古本屋の店主ってやつはどいつもこいつも馬鹿ばっかなんだ!」と怒りの書き込みをしてる人がいたけど、おそらくその人はどこの古本屋へ行ってもそういう対応しかしてもらえないような人なんじゃないかと思うけどね。たしかにどうしようもない古本屋店主もいるけどね。 え?お前もな?


THE END


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