かつあげ店長の事件簿
 
THISPAGE かつあげ店長 CASE 1〜かつあげ店長、おおいに怒るの巻〜
   第1回 (02.07.11UP)
   第2回 (02.07.12UP)
   第3回 (02.07.18UP)
かつあげ店長 CASE 2 (02.07.18UP)
かつあげ店長 CASE 3 (02.07.21UP)
かつあげ店長 CASE 4 (02.08.01UP)
かつあげ店長 CASE 5 (02.08.21UP)
かつあげ店長 CASE 6 (02.09.10UP)
かつあげ店長 番外編1〜店長の右ストレート〜  (02.09.11UP)
NEXTPAGE かつあげ店長 CASE 7〜走る店長の巻〜 (02.11.22UP)
かつあげ店長 CASE 8 (03.03.21UP)
かつあげ店長 番外編2 〜めぐり逢いの巻〜  (03.03.22UP)
かつあげ店長 CASE 9 (04.03.21UP)
かつあげ店長 CASE 10 (04.05.06UP)
BONUSTRACK カツテンくん

かつあげ店長、おおいに怒るの巻 CASE 1(02.07.11UP)

彼が万引きした品物は、高だか390円の本1冊だったのだが、そのやり方とタイミングが悪かった。

タイミングというのは、このところ連日万引き未遂が起きていたので、ちょうど万引きに対してはピリピリしている矢先だった。そして何よりもそのやり方の姑息さに古本屋店長は一発でキレてしまったというわけだ。

彼は数ヶ月前にも盗ろうとしたことがあって、そのときは犯行に及ぶ直前に、店長は棚の整理をする振りをしながら彼の側へ行って、気付いてるぞ、とさり気なくアピールしてやったらそのまま商品は棚に戻して帰っていった。

その後もちょくちょく来ていて、ちゃんと買ってくれてはいたのだけれど、一度そういうことがあるとこっちもやはり多少は警戒するようになる。いつも何事もないような顔をしてレジを打ってはいるが、彼は店長の心のブラックリストの末席に位置する人物であった。それでも、そろそろ警戒心もとれてきて、彼もよく買いにきてくれるありがたいお客さんのひとりだと思い始めたときだっただけに、今回の事は残念でならない。

*******************************

その日彼が来店したのは夜の11時頃で、2、3分店内を見回ったあと、1冊のコミック本を持ってレジまでやってきた。

「すいません。これの中を確認したいんですけど。」

うちの店で売っているコミック本はすべて透明な袋で密閉されているため、中を見たい人には声をかけてもらうようにしている。それでもちろん快く、 「はい、どうぞ。」と袋から取り出して渡した。

彼はパラパラとページをめくってから「すいません。持ってるやつでした。」と言って本を返すと、そのままレジをあとにした。これは別に何の問題もない。こちらも愛想よく「あ、そうでしたか」と微笑みかけたほど。

レジをあとにした彼はそのまま出口へと向かって、ぼくは今さっき袋から取り出した本をまた袋にしまいながら帰ろうとする彼のうしろ姿をモニター画面から見送った。

それは彼が出口を出る直前だった。
出口近くの本棚から何かを手にとってそのまま出て行ったのだ。

あれ?今のはなんだ?確かに何かを手に持ったぞ。あれあれ?
彼が自分で持ってきてあそこに置いてあった物かな?

小さなモニター画面でははっきりと確認は出来ない。しかし以前の未遂の件もあったから、もしやと思いすぐにあとを追いかけて、自転車のカギを外そうとしていた彼に声をかけた。

「お客さんすいません。いま手に持った物はお客さんの持ち物ですか?」
「はい?」
「いま出るときなんか手に持ちませんでしたっけ?」
「・・・・・・・・・・・・」

いまチラッと見ているかぎりでは何も持っていない。
まさか見間違いか?いやそんなことはない。
一瞬不安もよぎったがここまで来たらもう後戻りは出来ない。
「ちょっといいですか。」と言いながら彼のシャツのわき腹あたりをめくりあげてみると、いつの間に隠したのかしっかりと本が1冊隠されていた。

「あー、やっぱりか。なんだよ、姑息な手を使いやがって。何が確認させてくださいだ。そうやってこっちを安心させといて持ってくつもりだったんだろ。ちょっと店ン中に戻って。」

彼は観念したようにすごすごとまたレジの方まで戻って行った。逃げられないように彼を先に歩かせて、ぼくが彼の後をついて歩いているうちに、さっき愛想よく微笑みかけた自分がバカのように思えてきてふつふつと怒りがこみあげてきた。

「そうやって今までボコボコにされたやつもたくさんいるんだよね。」
と、まるで中学生の不良が言いそうなことを口走ってしまった。
「はあ、ボコボコですか。」
オイオイ勘弁してくれよという感じで彼はつぶやいている。

「ただスーッと持ってくだけなら、ちゃんと金払えよで済ませられるけど、お前みたいにずるい手を使ってかっぱらおうとするやつはホントむかつくんだよ。オラ! おう、どうするつもりだ。おまえ、前にもかっぱらおうとしただろ。あんときゃ未遂でおわらせてやったけど、おまえは要注意人物になってんだよ!」
「えっ、マジすか。」

彼の受け答えにはまだ少し余裕が感じられて、それがますますぼくの怒りに油を注いだ。

「おい、オレをただの古本屋のオヤジだと思ってたら大間違いだぞ!え、やったろかこら!」

わっ、まるでチンピラだ。

ぐっと彼に接近してにらみつけたら、さすがにこれはヤバイと思ったのか、
「ホントすいません。今さらこんなこと言ったってしょうがないんですけど、ここでやったの初めてなんすよ。けっこうここで買ってるんすよ。」
と目を真っ赤に充血させて涙目になりながら訴えている。

「そりゃ初めてだろうよ。だってこの前は盗る前に近くまで行って気付かせてやったもんな。こっちだっていつも気を使って万引きしそうなやつには、さりげなく近寄ったりして盗らせないようにしてやってんだよ。それがあんな姑息なまねされると許せねんだよ!」

彼がよく買ってくれていたのは知っていたが、もうこの怒りは抑えようがなかった。もっと冷静に考えられていれば、そこは穏便に収めて今後も客として来てもらえるように持っていけたのだろうが、もはやそんな小ざかしい計算はできなかった。それでも、彼の怯えはじめた様子を見て、とりあえず鉄拳の制裁は堪えることができたが、この勢いを収拾するのはなかなか難しい。

彼の盗った本をバン!とカウンターの上に叩きつけて、

「おい!これはどうしてくれんだよ。え?いくらで買ってくれんだ?」

出たー。かつあげだー。
かつあげ店長ここにあり。ひぇ〜。

さあ、さあ、これはやばいぞ、やばい事になりましたよ。
小型犬のようにプルプルふるえる彼はいったいどうなってしまうのか。
味方か敵か、かつあげ店長。店長の正体はいかに!
次週をお楽しみに!!


第2回 (02.07.12UP)

「おい!これはどうしてくれんだよ。え?いくらで買ってくれんだ?」
彼の盗った本をカウンターの上にバシッと叩きつけると、彼はビクッとしながら

「え、1000円とかじゃ甘いっすよね。」
「当り前だろ。普通に盗ろうとしたならそれでも許してやるけど、あんな姑息なまねしやがって、そんなもんで許してもらえるわけねーだろ!え!」
「そっすよね。」

彼の言葉はやけに落ち着いているようにも聞こえるが、目は真っ赤に充血し、かなり動揺しているのがわかる。こうなってしまった以上、今後彼はもう二度とこの店には来られないだろう。それならば今のうちに巻き上げてやろうじゃないか。そんな鬼のような考えが見え隠れしていた。

「いまあんまり金持ってないんすよ。いくらぐらい払えばいいっすか。」
「そんなの自分で考えろ!!」
「うーん、そうっすね・・・・・・」

彼は後ろを向いて財布の中身を確認している。
1000円じゃダメ、その上自分で考えろと言われちゃ、有り金置いてけと言われているようなものだ。彼の財布にはいくら入っているのかはわからないがここにきて躊躇している様子だ。

「あんまり持ってないんすけど、いくらぐらいっすかね。」
また同じ事を聞いている。
「いまいくら持ってんだよ。」
「え、あ、いや、1万も持ってないス。」

(しめしめ、1万ぐらいは持ってるんだな。)

ここまでくるとどっちが被害者でどっちが加害者かわからないようになっている気もしないでもないが、ことの成り行き上しょうがない。

バンバン、
また本を叩きつけながら、
「え?どうすんの?いくらで買ってくれんの?」
「・・・・・・・・・・・」

ぼくは煮えきらない彼にしびれを切らし、
「よし、じゃあ、いまここで金払って済ませるか、警察に通報するかのどっちかにしろ。どうする?どっちだ?」

二者択一を迫られた彼は、もうどうするもこうするもなかった。

「じゃあ、金払います。」
覚悟を決めたように、あきらめたように財布を広げて、入っていた札を全部抜き出すと扇のように、トランプのカードのように広げて見せて、
「いまこれしかないっす。えーっと、3、6、7000。いま7000円しかないっす。」

えーっ!
高だか390円の本を盗ろうとしたばっかりに7000円も巻き上げられてしまうのか!?
そりゃまさにカツアゲじゃないか!店長!大丈夫っすか!
さあ、彼の7000円はどうなったのか。
鬼のかつあげ店長のとった行動とは?
鬼の目にも涙?
どうぞ次回にご期待ください!!


第3回 (02.07.18UP)

財布の中から札を全部抜き出すと扇のように、トランプのカードのように広げて、どうぞ好きなだけ取って下さいといわんばかりにぼくの前に差し出した。

「よし。」
ぼくはその扇状になったお札の中から1000円札を1枚を引き抜くと
「じゃあ、1000円でいいよ。」
「!?」

全額持っていかれるものと覚悟を決めていた彼は一瞬あっけにとられたような顔をしてからすぐに
「ほんとすみませんでした。」
「うん、いいか、今度やったらこれじゃすまないからな。この本も持って帰っていいから。」
そう言いながらカウンターの奥に回ってその本を紙袋に入れて彼に渡した。

「すみませんでした。」
紙袋を受け取った彼はそのままさっと帰るかと思えば、余計なことを言い始める。

「こんなこと言っちゃ、また調子に乗ってると思われるかもしれないんすけど…」
「ん?」
「いや、前からただもんではないなとは思ってたんです。」
何を言うかと思えば・・・。

これはさっきの「オレをただの古本屋のオヤジだと思ってちゃ大間違いだぞ!」のセリフを受けてのコメントであろう。それにしても本当にそう思ってたならするんじゃないよ、ったく。

ただもんじゃないと思っていたと言われて、ちょっとくすぐったいような、しかしどこかでナメられているような複雑な気持ちになって
「よお、オレは今むかついてんだからさ、余計なこと言ってないでさっさと帰れよ。こういうときはさっと帰るもんだぞ。」
「あ、はい、すいません。」

彼はあわてて帰ろうとしたが、だいぶん冷静になったぼくは、もうこの客は二度とうちへ来ないんだろうなと思うとなんだか惜しいような気になって、帰ろうとする彼に向かって、
「ま、しばらくたって落ちついたらまたちゃんとお客さんとして来てよ。そんときはちゃんと客と店員の関係として接するからね。」
と急に軟弱な言葉を投げかけた。
「はあ、わかりました。」

「わかりました」の言葉を残して彼は帰っていったが、“もう来るわきゃねーだろ”のオーラが体中から発散されているのを感じずにはいられなかった。
ぎゃふん。

THE END

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かつあげ店長 CASE 2 (02.07.18UP)

万引きしようとしたその若者を捕まえたのだが2週間前で、今日は彼がその代金を持って品物を引き取りに来るという約束の日だ。

そう、あれは2週間前のこと・・・・・・・・・・・・・

 

アダルトビデオを物色していた若者は高額な一品を手にとると、それを持ったまま特価品が並ぶ中古ビデオのコーナへ移動して、そこでもしばらく物色していた。彼の仕草からこれは危ないぞと直感したぼくは、彼の近くまで行って「いらっしゃいませ。」と言いながら、陳列してある商品を意味もなく整えてまたレジへと戻った。これで彼も警戒されていることに気がついて妙な気を起こさないだろう。

そう思いつつ彼の動きに注意していると、はたして彼はレジまでやってきて
「これ、お願いしまーす。」
そう言ってカウンターへ出したものは280円也の超特価中古ビデオが1本きり。確かにさっきまで手に持っていた高額ビデオはなくなっている。

「あれ?お客さん。さっき手に持ってたビデオはどっかに置いてきてくれたんですかね?」
彼が肩からぶら下げているビニール製のバッグに入っているのは明らかだったが、カメラの死角になっていたためそこへ入れる瞬間は確認できていないのでとりあえずそう聞いてみた。

すると間髪いれず、「すいません!」
彼はそう言ってバッグからそのビデオを取り出すとカウンターの上へ置いた。

「あーだめだよ。ちゃんとわかってんだから。だからさっきわざわざ近くまでいったんじゃない。気づいてよ。」
「ほんとすいません。」(捕まった奴が言うセリフはみんな一緒)
「これはどうしてくれんの。」
2本のビデオを示すと
「じゃ、これだけで。」
そう言って280円のビデオだけ買わせてくれというふうに差し出す。
「あ?これだけね。」
そういってわざと高額ビデオの方を受け取ってレジを打とうとすると
「あ、いや、こっちだけで。」

「おいおい、そんなこと許されるわけないでしょ。わざわざ買い取ることで見逃してあげようとしてんのに。」
「いや、いま金ないんです。」
「そんなこと言われたってしょうがないよ。いくらもってんの?」
「1000円ちょっと・・・」
といいながら財布を見せる。確かに1000円札1枚とあとはレシートの類しか入っていない。
「金ないんじゃしょうがないな。買ってもらうことも出来ないんじゃ警察呼ぶしかないよ。」
「いや、ちゃんと買いにきます。15日給料日なんで、16か17には絶対に買いにきます。」
さすがのかつあげ店長も素直に出られると弱い。
「じゃあ、住所と名前」

彼はすぐに免許証を取り出すとぼくに差し出した。
そこに書かれてる住所と名前を書き写そうとしたが、冷静さを装っていても内心バクバクのぼくの手はプルプルと振るえてうまく書くことが出来ない。しかし手が震えているところを見られると格好悪いので、わざと乱暴に殴り書きするようにしてなんとか書き写すと
「よし、じゃ、16か17だね。もしバックレたりした時はすぐに通報するからね。」

//////////////////////////////////

そして今日、夜8時を回った頃に彼がやってきた。

「お、ちゃんと正直に来たね。このビデオだね。」
そう言って、よけておいたあの時のビデオを取り出してカウンターの上に置いた。
彼はすぐに財布を取り出してお金を払う準備をしている。

「ま、こうして正直に来たことだし、買いたくなければ買わなくてもいいよ。」
「!?」

「え!?いいんすか。」
「4000円といえばキミにとっても安い額じゃないでしょ。」
  こくり。(うなづいている)
「それを盗られる方の立場にもなって考えてみてよ。」
「ほんとすみませんでした。」
「はい、もうやらないように。じゃ、いいよ。」
「すみませんでした。」

「すみませんでした」の言葉を残して彼は帰っていったが、こっちも何か肩の荷が降りたような、ほっとした気分になった。きっと彼はもう二度と万引きはしないでしょう。

男っとこ前やなー、かつあげ店長!かつ丼一丁!

THE END

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かつあげ店長 CASE 3 (02.07.20UP)

この前のは捕まえてみたらまだ15歳の少年だったよ。

そんなに若いとは思わなかった。最近の子はでかいからね。15でエロビデオかっぱらうもんかね。ぼくが15の頃はどうだったかな。本宮ひろ志の「俺の空」を本屋で立ち読みして興奮してたくらいじゃなかったかな。それはもうちょっと前かな。

その15歳の少年なんだけど、ぼくがレジを打ってる隙に店を出て行こうとしたんだよ。初めから怪しげだったから警戒はしてたんだけど、やっぱりかー、ってな感じ。

やばそうだったから、店に入ってきたときにすぐ彼の近くまで行って「いらっしゃいませ〜」って声かけたんだけどね。こっちも警戒してたから出て行こうとするところを女房がすかさず「ちょっとまて」って止めようとしたんだけど、女房を突き飛ばして、その勢いでそこらへんに陳列してあったCDもぶちまけて遁走してんだ。

ぼくはレジをちょうど打ち終わって、レジのお客さんからもらったお金もまだしまわないうちにすぐ飛び出して追いかけたんだけど、そいつは乗って来た自転車もほったらかしで猛ダッシュして逃げまくってんだよ。

「まてこら!にげんな!とまんねーと殺すぞコノヤロ!」って言いながら300メートルくらい追いまわしたかな。ま、殺しゃしないけど。止まらないと撃つぞと同じようなもんかな。 向うが若くても、こっちもわりと体力はあるから、むこうはもう走れなくなったみたいで、ようやく止まった。すかさずパンチ5発キック5発+αのおしおきだ。逃げるからだよ。逃げなきゃ痛い思いしないですんだものを。

それで、おまえいくつだって聞いたら15歳ですっていうでしょ。もうびっくり。そんなに若い奴って知ってたらそんなに殴んなかったのに。ま、しょうがない。へへへ。

もう頭にきてたから即110番。
しばらくしたらおまわりさんが一人でやってきた。いつもは4,5人でどやどやパトで乗りつけるのにそのときはちゃりんこポリスひとりだけ。電話で15歳の奴だって言ったから、たかがガキの万引きだから一人で大丈夫と思ったんだろうね。こっちの追走劇は知らないからね。

で、そのポリさんの言うには「どうします?店長さん次第なんですけど。起訴します?」とか聞いてくるんだよ。そんな起訴するほどのもんじゃないでしょ。どうせ起訴したって少年だし。時間と金の無駄だよね。それで「ま、別に起訴しようとは思ってませんから、おまわりさんの方できつくお灸すえてやってください。」っていってポリさんに任せたんだけど、そのお灸がまたツボを 外してんだよ、おいおいだ。

「ま、男だから見たいのはわかるけど、これは売りもんなんだから。」とか言ってる。そういう問題じゃないだろ!いちおう住所とか親の名前とか聞いてたけど、形だけね。別に調書取るわけでもないしね。

ポリさんは「それじゃ自分で店長さんに謝って!」って言って謝らせてから、これでいいスカとか言いながらそのまま少年を帰らせた。「私の見たところ彼も悪い子ではなさそうなので・・・」とか言ってる。 甘いポリスだな。手口はもう常習の手口やで。レジを打つ音に耳をすませてパクるところといい、抜き取ったあとに別の商品を置いて抜いたのがばれないように埋めているとろこといい。 しかも高いやつばっかり2本だしね。出来心で高いやつばっかり狙わないっての。

それはそれで一件落着となったけど、悔やまれるのは親に連絡しなかったところだね。ああいう子供はポリさんより親のほうがこたえるもんな。連絡された親はもっとこたえるだろうけど。ポリさんが親の名前とか聞いてたときに「親にだけは連絡しないで下さいいいい。」って懇願してたよ。その前に ぼくが「警察に通報するからな」と言った時も「通報だけはしないで下さいいい。」って言ってたけど。その辺も計算づくの逃げ口上なんじゃないのかね。

THE END

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かつあげ店長 CASE 4 (02.08.01UP)

昨日の奴は素直に反省してたから免許証コピーしてから盗ったもん買わせて許してやったよ。もう28歳のいい年なのに漫画5冊盗んでんの。ずるがしこくちゃんと安い本は何冊か買ってて帰り際に出口付近にセットしていたと思われるその本をさっと持ち出した。

すぐ追いかけていって「今のお客さんの持ってきた持ち物ですか」って確かめたらやっぱりうちの本。「ちょっと店に戻って」って言って連れてきてから、まだ店にほかのお客さんがいたからその人たちの会計が終わるまで待たせといた。正座させて。

「ちょっとそこに座っててくれる?」って言ってレジ脇の狭いスペースに座らせておいた。別に正座しろとは言わなかったんだけど、ふと見たらきちっと正座して背筋伸ばしてるからああこいつ悪いやつじゃないなーと思って「今回はこれを買い取ってもらうことで許してあげるけどもうほかでもこんなことやっちゃだめだよ。」って言って許してやったよ。

ほかのお客さんは知らん顔してたけど、あーこいつ万引き君だなって思ってたでしょ。彼も正座させられてるとこ他人に見られてかなり恥ずかしかったと思うよ。いい年だしね。レジの横できちっと正座して、「おまえは招き猫か!」ってつっこみたいところだったね。別に正座しろといったわけじゃないけどね。何度も言うけどさ。だって店にぼく一人だから座らせとかないと隙を見て逃げられるかもしれないもんね。

THE END

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かつあげ店長 CASE 5 (02.08.21UP)

また警察署に行って来たよ。
高々1300円の万引きだったんだけど、やけになめたヤローだったから110番した。

警官が来たんだけど「店長さん、どうします?」って聞くんだよね。
つまり、このまま許すか起訴するかってこと。それでヤローに
「示談で済まして欲しかったら考えてやってもいいぞ。」
って言ったんだけど
「あ、じゃあ示談で。」とかなめたこと言ってるから
「あとで仕返しとか来られてもいやだから被害届出します。」
って警官に言った。そしたら警官はほかの警官に小声で「起訴の意思あり。」って耳打してんの。そしたら急に4人くらいの警官がやってきてなんか騒々しくなってた。

で、ヤローは警察署へ連行されることになって、
「じゃあ店長さんも一緒に警察署まできてください。」って言うんだよね。こっちはまだ仕事中だっての。しかも夜遅く女房一人に店番させるわけにいかないでしょ。
「店を閉めてからならいけますけど」って言ったら、なんか無線で打合せしてて
「じゃ、閉店後来てください。」ということで、さっき店閉めてから行って来た。

ヤローは待たされてんのかと思ったらもういないんだよね。
「ではこちらにお座りください。」って取調室みたいなとこに座らされて
「ここに署名をお願いします。」って3枚の紙に署名させられた。

書面を見てみると
「このたびは小額でもあることで本人も反省しているようですので、物品を返してもらえればいいです。犯人の処分は望みません。」
って書いてあって、そこに署名すればぼくがそう言った事になるようになってる。

確かにそのほうがこっちも楽でいいけど、なんか納得できんな。
「署名はせん!」と言えばいいんだろうけどそこまでこじらせるのもなんだしね。でも犯人の処分は望みますよ。だったら品物返してもらうよりあの場で買わせたほうがよかったじゃん。
ま、何も言わずに署名したけど。

でも警官も何にも言わないんだよね。「ではここに名前と印鑑を」っていうだけ。ちゃんと説明しない。こっちもさっと目を通して内容は理解して署名したからいいんだけど、これまたなんか納得できんな。そして署名し終わったら「それではこれで結構ですので。」ってお開きにしようとしてるから
「で、やつはどうなりました?」ってきいたら、“もうしません”って反省文を書かせて会社の上司が身元引受人になって迎えに来させて返したってことだった。

こんなもんよ。
警察もこんなこんまい事件にいちいち関わってられんもんな。わかるけど。
でもこんなんじゃ万引きで捕まってもたいした事ないやって思うやつも増えるんじゃないのかね。
なんとかならんか。

THE END

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かつあげ店長 CASE 6  (02.09.10UP)

乗ってきた自転車放置して逃げてもすぐ足がつくってのに。

でもやつらにとっちゃとりあえずは逃げて正解だったかも。
あの場で取り押さえてたらボコボコにしてただろうからね。
もーーー!あったまくるよ。
そのとき店番はひとりでほかにお客さんもいたから追いかけられなかったんだよね。でもあんまり深追いして逆に刺されてもやばいからかえって良かったのかな。4人だし。

少年課の刑事が来て結構真剣にやってくれた。
その前にきた交番のおまわりさんがよくお世話になってる人だからよかったのかな。何度か事件のたびにきてくれてて非番の日にはたまにお客としても来てくれてた人だから。その人が刑事呼んでくれた。

今までのパターンだと最初にきたおまわりさんが「どーします?」ってめんどくさげに言って適当に処理されるところだけどね。

そういえばそのおまわりさん、刑事さんが来るのを待ってる間に本棚眺めてて1冊買ってくれた。ええ人や。

ところで、4人組のうちやったのは二人だけだったらしい。ほかの二人は店を出るまでその二人が万引きしてたことは 知らなかったということだった。それでその実行犯の二人だけがその刑事さんに連れられて親と一緒にやってきてあやまったんだけど、ひとりのほうの母親はなんだかヤンキー風でオイオイって感じだったな。 一生懸命あやまってたけど。もうひとりの母親はおとなしそうで結構動揺してた感じ。泣きそうだったよ。まだ少年ということもあって今回は事件にしなかったけど、やめてほしいよ。

なんでこう狙われんの?ことごとく捕まえてるから、あそこは盗りやすいぞって情報が流れてるはずないと 思うんだけど。逆にあそこのオヤジは気をつけろって言われてもおかしくないくらいなのに。

店の雰囲気がオープンだからかな。普通のお客さんにとってはそれに越したことないからね。わざと気安く出入りできる雰囲気にしてるんだけど、それで勘違いするやつも出てくるのかもね。 ぜんぜん客の動きは気にしてないふりしてるけどめっちゃ神経張っとるっちゅうねん。

刑事はレジをもっと入口近くにしたほうがいいなんていうけど、それじゃあ普通のお客さんは入りづらいでしょ。刑事は泥棒を基準にもの言うけど、泥棒対策第一で店作りしてちゃ客は来ないよ。 その辺が難しいところだね。

THE END

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かつあげ店長 番外編1 店長の右ストレート (02.09.11UP)

ほんと最近の柿は生意気でしょうがないな。

さっきもワヤワヤと3人でやってきて、我が物顔でアダルトコーナーへ入っていきよる。どう見ても中学かせいぜい高校低学年。低学年たって上中下の3段階しかないけどね。

ひとりでこっそり見に来るなら大目に見ることもあるけど、ああおおっぴらに開き直られちゃ黙ってるわけにはいかないですよ。しかもああいうやつらに限ってひとりじゃ何もできないんだよね。その上かっぱらわれたりしたんじゃ目も当てられないから、すぐに注意しに行った。

「すいませんけど、18歳未満はお断りになってますんで…。」
ってやさしくシタ手にね。その時は三人のうち二人だけそのコーナーにいて、そのうちのひとりはすぐに出ようとしてたけど、もうひとりはまるでシカトかましてる。こっちを振り向きもしないで物色続行。

それでもう一度やさしく
「すいません、18歳未満はお断りですんで…。」
それでもやっぱりシカト。

そうなると出ようとしていたもうひとりも気が大きくなったのかまた物色し始めようとしてる。それでこっちはもうかなり切れかかっていたんだけどとりあえず堪えて、
「ねえ、きこえてる?18歳未満お断りだから。」
と言うと、ようやく振り向いて“何言ってんの?”みたいな顔してこっちを見てる。

プチプチプチ、あぶない、もう仮どめの糸しか残ってない。ぐぐぐ、がまんがまん。
「ね、18歳未満お断りだからさ、18になってないでしょ。」
やつらは何も答えないままスゴスゴと出てきて、やつらというか、シカトを決めこんでた方なんだけど相変わらず“何言ってんの?”みたいな顔して出てきて、そのままおとなしく出て行けばいいのにすれ違いざまに「はあ?」って言いやがった。

最近の若い子達が使う「はあ?何言ってんの?バカじゃないの?」の意味合いを含めた「はあ?」だ。

ぶっちーん。

「おら、なめてんじゃねーぞ!」首根っこを捉まえてグラグラ2、3回揺すぶってやると、ちょっとビビった様子ではあったけれどそのビビリを悟られちゃいけないという感じで、そのままちょっと早足になりながら出口へと向かって歩きながら「わけわかんねーよ。」なんてことを言っている。

「おい!なめた口きいてんなよ!おまえら二度と来るな!」
と言いながら店から出すと、やつもそのままおとなしく帰ればいいものをまた
「わけわかんね。」
と言ってこちらを挑発的な目で見ている。

こっちも腹の虫が収まらない。店から出て行きながら
「お、なめたこと言ってんなよ。おら、やったろか。よし、やんならかかって来い!」
と言うと、一瞬躊躇した様子だったが、乗りかけた自転車を止めて本当にかかってきた。

こうなるとこっちも引くに引けなくなって、やつが近寄ってきたところで先制パンチ一発。さすがにまともにヒットさせちゃまずいかなと思ってちょっと外したら頬骨のあたりをかすめただけだったが、それだけでやつは戦意喪失した様子で後ずさりし始めた。そこへキックを一発かますと、やつは仲間のほうを見ながら手で来い来いして「加勢してくれ」という合図を送っている。

う、面倒だなと思ってそっちのほうを見てみると、友達は「いやいや」と首を振っている。ちょっとほっとしつつ
「おい!まだやんのか!」と言うと
「いや、もういいっす。」と言ってしぼんでしまった。

「おまえら○中か」
「はい、○中っす。」
「ったく、○中のやつらはどうしようもねえやつばっかりだな!」
「へへへ」
「なに笑ってんだよ。」
「いや、○中のやつらはどうしようもないって言ったから。」

こいつまだ余裕かましてるな、とは思ったけれどいつまでもこんな事しててもしょうがないと思って
「さっさと行け!二度と来んなよ!」
と言って追い返した。

しかし後から思うとちょっと失敗だった。余裕を持たせたまま返しちゃったら仕返しに来られる確率は高い。仲間連れて、危ないもん持って。ま、しょうがない。充分警戒するとしよう。

子供相手になにやってんだかと思うわれるかもしれないけれど、子供相手だからと大人が自分の気持ちを偽って子供にやられるがまま、言われるがままじゃつけ上がらせるだけなんじゃないのか?八名信●も公共広告機構のCMで「大人を逃げるな」と言ってるじゃない。それはまた別の意味かな?

でもぼくは自分が大人気ないとは思ってないし、かといって子供のためを思ってこうしたわけでもない。ただ人対人の接し方がなってなくて頭にきたからで、この相手がもし大人だったとしても同じことだろう。(こうなってしまうとしたらそれは相手が年齢的に大人だったとしても精神的に子供なんだろうけどね。)

女房は「最近のこどもは加減を知らないから何をするかわからない。頭にきても無視するのが一番だ。」とは言うけれど。こんな時、八名さんだったらどうするんだろうな。まずーい!もう一杯!

THE END

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