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店長裏話
謎は深まるばかり (2002.10.30UP)
〜続・たまごが先かにわとりが先か〜

以前このコーナーで「たまごが先かにわとりが先か」というのを書きました。
あるひとりのお客さんがうちの店で同じ漫画(『鉄鍋のジャン!全27巻』)をなんども売ったり買ったりしているんだという話です。つまり古本屋であるうちの店に自分で売りにきたその本を何日かすると買いに来て、また何日かするとそれをまた売りにくるということを何度も繰り返している不思議な人がいるという話です。あれを書いたのはもう1年以上前になりますが、最近またさらに謎が深まる展開がありましたので少しお話しましょう。

あの話をここにアップして以降、その売り買い行為は一度くらいはあったでしょうか。しかしその後それはやみました。そのお客さん(仮にAさんとしておきましょう)が最後に売りにきた『鉄鍋のジャン!全27巻』はそれから長い間なかなか売れずに棚に陳列されつづけたのです。

Aさんはといえば、前からよくうちを利用してくれているお客さんなのでこれまで同様よく来てくれていました。『鉄鍋のジャン!』はもう買わなくなりましたが、やはりたまに自分で売りにきた他の本をまた買っていくという不思議なことはしていました。そして来るたびに『鉄鍋のジャン!』の陳列してある位置は確認している様子です。たまに位置をずらしたりすると店内を回って陳列してある場所を確認しているようでもあります。なんとも不思議です。

そんなある日、今から3ヶ月ほど前だったでしょうか、ようやく『鉄鍋のジャン!全27巻』がネット通販で売れていきました。『鉄鍋のジャン!』は遠く他県へ発送されて、ぼくはなんとなく悪夢から解放されたような、妙にすっきりした気分にさえなりました。

さて、それから何日かしてAさんがやってきました。『鉄鍋のジャン!』のことはもう気にしていないのかなと思っていましたが、やはりそうでもないような様子です。店内を何度もぐるぐると回って必死で何かを探している感じです。そうです、『鉄鍋のジャン!』を探しているに違いありません。聞かれれば「売れました」と答えるところですが、特に聞かれもしないので黙っていました。するとその日は捜すのをあきらめて帰っていきました。

それから何日かしてからまたやってきてやはり一生懸命に捜している様子です。なんとなく気の毒のような気もしましたが、こちらから「鉄鍋のジャンは売れましたよ」というのも変なのでやはり黙っていました。

また何日かしてAさんがやってきました。
少し店内を探していた様子ですがもうあきらめたのでしょうか。何冊かの本を棚から手にとって会計に来ました。

「いらっしゃいませ」

その差し出された本はなんと『鉄鍋のジャン!』でした。棚に3冊だけバラで並べてあった飛び飛びの『鉄鍋のジャン!』を3冊とも買ったのです。な、な、なぜなんだ。なぜそんなに『鉄鍋のジャン!』にこだわるのか。しかもそこまでこだわっているものをなぜすぐに売りに来るのだ!あまりにも不可解。

いえいえ、不可解はそれにとどまりません。数日するとこの買ったばかりの3冊の『鉄鍋のジャン!』をまた売りにきたのです!あ"ーーーーーーっ、なぜなんだーーーーっ。それでもこんがらがった頭のまま何食わぬ顔で買い取りました。

ここまで不思議が続けばもう充分でしょう。
と思いきや、この話はさらに追い討ちをかけるのです。

これはつい3日ほど前のことです。
またAさんがやってきました。
「いらっしゃいませ」
「買取りお願いしまーす」
と言いながら重たそうなバックの中から本を出し始めました。

ババーーーーン
『鉄鍋のジャン!』『鉄鍋のジャン!』『鉄鍋のジャン!』『鉄鍋のジャン!』
またまた出ました『鉄鍋のジャン!!!!!』
しかも全巻揃い!『鉄鍋のジャン!全27巻』堂々の登場です!

どこか他の古本屋で買ったものでしょう。その『鉄鍋のジャン!』がまた持ち込まれたのです。なぜだ、どうしてなんですか!

そして今『鉄鍋のジャン!全27巻』はまた店に陳列されています。
Aさんに買われるのを待つかのように。

ゾゾゾーーーー。


THE END

2004.11.4追記:

これを書いたのはもう2年前になりますが、その後もこの行為は継続しています。いや、正確に言うとちょっとパターンは変わってきましたが、似たようなことが続いています。どう変わったかと言えば、もはや自分で売りにきた鉄鍋のジャン!を買うことはなくなりました。 しかし売りには来ます。鉄鍋のジャン!を。

どこかほかの古本屋で買ったと思われる古本ですが、それをなぜかうちの店に売りに来るのです。全巻揃っていればまだしも、バラで持ってくることが多いので店でもちょっともてあまし気味です。それでもバラでちょこちょこと持ってきてくれているうちにだんだんと全巻揃ってきて、先日(2ヶ月ほど前)、あと23巻さえ持ってきてくれれば全27巻揃うんだけどなと思っていたところへAさん登場です。 「買取お願いしまーす」本の入っているAさんのバックの中には鉄鍋のジャン!が見えました。やった、ようやく全巻揃いそうだぞと内心ちょっとほそくえんでいました。

バックの中からは案の定、鉄鍋のジャン!が出てきます。
出てきます。
出てきます。
出てきます。
出てきます。
出てきます。

出たーっ!
またまた登場『鉄鍋のジャン!』
全27巻堂々の入場です。

まるで作り話のようですが100%事実です。現在当店にはこの全27巻と、第23巻だけが抜けた1〜27巻までの26冊と、バラで何冊かが在庫としてあります。
今なお謎は深まるばかりです。


2007.4.15追々記

早いものでこの話を書いてからもう5年ほど経ちました。2004年の追記では、最近は売りにはくるけれど買っていくことはなくなったと書きましたが、そんなことはありませんでした。いまだにそれは続いています。あれからその行為は2,3回ありましたし、 今日もひと月ほど前に売りにきたそれをまた買っていきました。

新たな展開としましては、チャンピオンコミックスの全27巻に加えて、文庫コミックス版の『鉄鍋のジャン』 も参戦したことでしょうか。これもAさんが売りにきたものですが、残念ながらまだ全巻は揃っていません。文庫版全13巻のうち7,11,13の3冊が抜けているためセットにはしていません。 早くこの3冊も売りにきてくれないかなあと思っているのですが、文庫版にはあまり興味がないのか、一度売りにきたきりで今のところ進展はありません。

そういえば先日、発売されたばかりの『鉄鍋のジャンR』 第1巻(新連載作品)も売りにきてくれました。やはり鉄鍋のジャンには並々ならぬ思い入れがあるようです。だったらなんですぐに売り払うんだ?うーん、、謎が謎呼ぶ真実はまだまだ続きそうです。


2009.1.22追々記さらに追記

本日入荷!
ジャン全16巻

いやはや、この記事を書いてからもう丸6年以上が経過しました・・・。 ピッカピカの一年生だった子も今年から中学生ですね。そんな月日が流れても、謎は深まるばかりです。Aさんはあいかわらずです。今日は鉄鍋のジャンのコンビニ本版全16巻を持ってきてくれました・・・。

チャンピオンコミック版、文庫コミック版、コンビニコミック版と、とりあえずリリースされたものはすべて入手&売却しているようです。もはやわたしは深くは考えません。毎度どうも〜ってなもんです。それにしてもAさんとの付き合いもずいぶん長いくせにいまだに「いらしゃいませ」くらいしか言葉を交わさないわたしもちょっと変わり者でしょうか・・・。だけどちょっと聞けないよなあ「どうしてですか?」なんて。

ちなみにここに書かれていることは100%事実で、一切脚色なしです。ネタじゃないのか?と思われるとちょっと淋しいのでちょっと念を押してしまいましたよ。 それではまた。

(text by yasuji)


(この記事に関して読者の方からコメントをいただきました。こちらでご紹介しています。)

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